2010年02月15日

◆リトヴィーノワの「桜の園」

舞台のイメージがあまりに印象的で、その舞台を見て以来、作品を読むとその俳優が思い浮かんでくるような上演がある。もちろんそれとは逆に、劇場で上演された、あるいはドラマ化、映画化された小説や戯曲が、自分のイメージと違っていることは、圧倒的に多い。

たとえば、マーサ・ファインズ監督の映画『オネーギンの恋文』でオネーギンを演じたレイフ・ファインズは、原作よりもはるかに年長だが、シニカルで物憂いオネーギン像を、微かな狂気と、退屈で陰鬱な老いの予感を滲ませながら演じていた。

チェーホフの『桜の園』でいうなら、革命を夢見る永遠の学生ペーチャ・トロフィーモフを、1954年生まれのアレクサンドル・コルシューノフに演じさせるマールイ劇場の演出は、ペーチャの苦く哀れな未来を垣間見せるようで、スフェーラ劇場でドクトル・ジヴァゴを演じる時とはうってかわった役者の甲高い裏声も、いかにもペーチャらしい。

一方、『桜の園』のヒロイン、ラネフスカヤには満足したことがなかった。
だが、モスクワ芸術座でラネフスカヤを演じるレナータ・リトヴィーノワの映像の断片を見て、愚かしくも上品で美しく破滅的なヒロインを演じるには、たしかにリトヴィーノワはふさわしいかもしれないと思った。女優で作家でもある彼女を初めて見たのは、アレクサンドル・ミッタ監督のドラマ『国境――タイガ物語』だったが、その独特の語りと存在感にはいつも惹きつけられる。

2009年9月29日 チェーホフ『桜の園』 ラネフスカヤを演じるレナータ・リトヴィーノワ