◆The Red Book
さっきすれ違った人が、1984年にウォルフガング・ペーターゼンが制作した映画『ネバーエンディング・ストーリー』の話をしていた。原作は、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』。不思議な本を手に取った少年が、その物語の世界である「ファンタ―ジェーン」に入りこみ、英雄となって戦うストーリーである。
最近、"The Red Book"という本を知り、人間が本の世界に入りこんでしまう物語について考えていたところだったので、そんな会話を耳にした偶然に驚いた。
"The Red Book"は、バーバラ・レーマンが制作した文字のない絵本で、街角や海辺で偶然拾った赤い本の中に入りこんでしまう少年や少女たちの物語を、イラストだけで綴っている。アメリカの都市の灰色の雪の風景が美しい。
彼岸の世界に魅入られた子供たちは、『はてしない物語』のバスチアンのように現実世界に帰ることができるのだろうか。それとも帰りたくなどないから、本の世界へ去ってしまったのか。
存在のかすかな不安を感じながら、何度でもめくってみたくなる魔法の書。

Barbara Lehman, The Red Book. Houghton Mifflin: 2004.
以下の邦訳もある。バーバラ・レーマン『レッド・ブック』評論社、2008年
