現代ロシア美術作家50人を大判のカラー図版を駆使して紹介するという,贅沢な企画が実現した。インターナショナル・アート・マガジン『AVANTGARDE』第4号,<現代ロシアンアートの50年 アーティスト50人特集>である。

現代ロシア美術作家の中から,どの50人を選ぶか。それは,「現代ロシア美術」の起点をどこに置くかという問題にほかならない。そこで,ロシア・アヴァンギャルド世代が相次いで世を去り,ソ連非公認芸術が息を吹き返しはじめた1956年を,ロシア現代美術史のひとつの始まりとし,約50年というスパンを設定して50人の作家を選びだすことにした。いうまでもなく1956年は,フルシチョフによるスターリン批判の年でもある。
1番目にあげた作家は,イリヤ・カバコフ。50人の中にはカバコフより上の世代も含まれているが,その後のロシアアートシーンに多大な影響を与えたカバコフは,やはり現代ロシア美術の祖の1人である。カバコフの次には,彼と同時代に活躍し,平面作品では互いにきわめて良く似た表現方法をとりながらも,その後,袂を分かったヴィクトル・ピヴォヴァロフを選んだ。
一群のソ連非公認芸術家の後には,カバコフらを「父の世代」と呼び,新時代にふさわしいアートを作りだそうと試み,ペレストロイカ期にパフォーマンス・アートで一世を風靡したオレク・クリークらがやってくる。リストの最後に来るのは,クリークへのカウンター勢力として出現した1970,80年代生まれの若手作家たち。きわめて荒削りな図式ではあるが,この50年間のロシア美術の変化を捉える枠組みのようなものを作ってみたかった。
ソ連のグロテスクな日常にひそむ詩情を描いたオスカル・ラビン。精神病院への入退院をくりかえしながら,みずみずしい花の絵に生への希望を塗りこめたウラジーミル・ヤコヴレフ。一族の記憶をアーティストブックに織りこんだヴェーラ・フレーブニコワ。「水の作家」アレクサンドル・ポノマリョフ…… ユニークで多様な現代ロシア美術の50年を,ぜひ眺めてみてほしい。
同書に収められた,現代ロシアの美術館と文化統制の問題を克明に記した沼野充義氏の「ロシア現代美術紀行」,カバコフの絵本と原画展を通じて,美術をめぐる状況を浮かびあがらせた籾山昌夫氏の論考も必見である。