◆学会発表
学会のプログラムの変更があり,ロシアのベールイ研究第一人者のラヴロフが司会し,大学生の時からの愛読者の著書だったジョン・エルズワースと同じ席に座って発表することになった。報告のテーマは,「ベールイの『モスクワ』三部作における「視線」」で,その後の質疑応答でも,会場から色々な有意義なコメントをもらって刺激になった。やはり,ベールイ一人だけを扱った専門的な学会なので,出てくる質問や感想,アドバイスもとても面白い。
昼休みには,プーシキン博物館内にあるローザノフ図書館のエクスカーションがあり,名前は知っていても写真でしか見たことのない1900-20年代の稀書を間近に見た。ロシアには,今までの「高尚な芸術」に対する反抗などの意をこめて壁紙に印刷した文集がいくつかあったが,今回見た本に使われていた壁紙は,予想以上に繊細で優雅な風合いで,長年の思いこみとは全然違う趣だった。
報告の後,ベールイ博物館のサイトの立ち上げについての説明があった。皆の興味の中心は,今までにスキャナで電子化された資料のどの程度がサイトで公開されるかということ。ロシアの図書館では,絵を1枚撮影するのに20ドルかかるなど,お金が幾らあっても足りず,そうした事情から研究テーマが限定されてしまうことも多い。諸々の博物館付属の図書館への入館基準も不透明で,問題が山積している。
