◆太陽の金色の光を信じて
朝,学会のエクスカーションで,スモレンスカヤにある旧モロゾフ邸の特別公開に行った。この歴史的建築は今では銀行の事務所になっていて,見事なゴシック風のホールやポンペイ風の壁画も,ふだんは目にすることができない。モスクワ音楽院のそばにあるゴーリキーの家博物館のように昔の邸宅が一般公開されている例は少ないが,モスクワにも元貴族や商人の邸宅が無数にあるのだ。
その後,ノヴォデヴィチ修道院のベールイの墓に行った。ベールイ自身もしばしば訪れて瞑想にふけった場所で,修道院の高い壁に囲まれた空間にはなるほど静かな霊感が満ちているようだ。ペトロザヴォーツクから来た研究者は,「太陽の金色の光を信じて…」というベールイの有名な詩をふまえて,太陽のような黄色いガーベラの花を供えていた。この詩は,ベールイの死後すぐに,詩人が自分の死を予言した作品であると解釈されて以来,伝説的な作品になった。
夜,学会に参加していたロシア文学研究者に紹介されて,今は亡き画家夫妻ウラジーミル・スチェルリゴフとグレボワの姪が住むアパートに行った。アパートは地下鉄ヂナモ駅の街道に面して建ち,すべての部屋の壁一面に絵がかかっている。グレボワはパーヴェル・フィローノフの弟子で,スチェルリゴフは作家ダニイル・ハルムスとも親交が深く,それぞれ面白い作風を確立したのだが,今ではロシアでもたまに展覧会が催されるだけで,美術関係者の話題になることも少ない。スチェルリゴフのスケッチや油彩を手にとって間近に見ると,1973年に粛清されたこの画家の独特の宗教観や心の動きが伝わってくるようだ。
