2005年08月15日

◆世界の呼吸法

川村記念美術館と佐倉市立美術館で開催中の「世界の呼吸法――アートの呼吸 呼吸のアート」は。公立美術館と私立美術館が手を組んで行った試みである。展覧会の解説文にも「今回初めて佐倉の二つの美術館において開催される本展は,あたかも「呼気」と「吸気」のように,量感の間で人々の行き来が生まれ,佐倉をアートで呼吸する機会を提供するでしょう」とあるように,車で30分弱の微妙な距離にある2つの美術館を移動すると,蔵や林,田園,大型店,古い商店街などを見ながら,佐倉という町について,町における美術館の役割について自然と考えることになる。

インスタレーション《呼吸の技法》(2000年)を展示したのは,KOSUGI+ANDOというユニット。共に1953年生れの作家,小杉美穂子と安藤泰彦が1983年に結成した。暗いだだっ広い部屋で,幾つもの小さなプロペラが回っている。プロペラの横には,緯度と経度を示したプレートがある。佐倉を除けば,コソボ,チェチェンなど,どこも紛争地帯である。私が吸う空気は,誰かが吐きだした空気。そして誰かがその空気を吐きだした場所はそれほど遠くない。そしてその時間はそれほど遠くない……という意味の言葉が部屋の中央に綴られている。だが,暗がりの中でその言葉を読んだ時,その場所は遠くない。そしてその場所はそれ程近くない,という風に一瞬読み違えた。チェチェンはモスクワからそれ程遠いわけではない。だが,チェチェンの独立を認めず,チェチェンがロシアに属する以上,チェチェン人と自分達が同じ国民として同じ権利を受ける立場にあることを理解している首都の住人はあまりにも少ない。

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2005年08月07日

◆霧と蝉と

先日,集中講義で札幌大学へ行った。ロシア語学科の先生方にも大変お世話になり,ロシアに留学して自分でアニメーションのビデオを集めてきた熱心な学生などもいて,とても楽しかった。ロシア人の専任の先生も2人いらっしゃるので,廊下や教室でいつもロシア語が響いている環境も素晴らしかった。

日曜日,市内を歩いていると,開拓時代風の石門を見かけたり,明治初期の洋館にぶつかったりした。清華亭といって,小さな庭園の中にある和洋折衷の山小屋風の建物で,一般公開されている。赤い絨毯がロマンチックで,桔梗のという和の花を洋風にあしらった装飾が面白い。

最終日,ロシア人の先生が,支笏湖経由で千歳空港まで送って下さり,長い山道を抜ける。湖の傍は一寸先も見えない程の濃霧で,まるでユーリー・ノルシュテイン監督のアニメーション『霧の中のハリネズミ』の光景のように幻想的だった。ちょうど羽田の大停電の日で,どうにか深夜に自宅に着き,翌日は大学説明会で大学へ。校舎の裏では夏草が生い茂り,蝉が鳴いている。8月前半にロシアにいないのは5年ぶり。今住んでいる地域では,この時期連夜盆踊りの音が聞こえてくる。