◆不思議の扉
今でこそ状況が変わってきたものの,99年にモスクワに来た頃は,表通りに看板も出さない書店やギャラリーが多かったし,やっとたどりついても催しが突然延期になっていたりで,無駄足を運びため息をつくことも珍しくなかった。そんな時,詩人のドミトリー・プリゴフが,詩人で心理学者のナターシャ・オーシポワを紹介してくれ,以来彼女がモスクワ中の〈不思議の扉〉を開いてくれた。イリヤ・カバコフやエリク・ブラートフのモスクワ時代に彼らのアトリエに通い,ゲンリフ・サプギールやイーゴリ・ホーリンの朗読会にも通ったナターシャは,昔も今もいつも文化の現場に静かに立ち会いつづけてきた。
今日はナターシャのアパートに招かれ,詩人のニコライ・ミレシュキンらと夕べを過ごした。ロシアの現代俳句や詩人たちの動向,モスクワの新しい実験的な劇場や,武満徹,日本の宗教,ペットの面白話など話題はさまざま。去年どうやら私は,カバチョークという野菜が日本にないのでモスクワで食べるのが楽しみだという話をあちこちでしたらしい。別の友人がカバチョークを見に菜園に来いと誘ってくれたし,ナターシャは自分で育てたカバチョークを2本もプレゼントしてくれた。
